空耳人生

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何語で話しかけるか

オリンピックを控えた東京も急ピッチでそうなりつつありますが、ここチューリヒもスイスジャーマン(スイス系ドイツ語)、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、英語など沢山の外国語が街中を乱れ飛んでいます。

旅人としては、その国に敬意を評してせめて挨拶ぐらいはその国の言葉でやろうと思うのですが、スイスジャーマンは全く分からず、ドイツ語とも違うらしいので、ここは大人しく英語で話しかけることにしました(その分笑顔を増量して)。

何語で話しかけるかは人種差別に繋がりかねない問題だという話と友人としたのですが、色々なシチュエーションがあって興味深いと思いました。

その友人はデンマークの血を引く家系に生まれましたが、あくまでスイス人なのでデンマーク語は流暢とまではいきません。しかし、見た目はデンマーク人と変わりないので、親戚のいるデンマークを訪ねると街では皆デンマーク語で話しかけてきます。初めのうちは良いのですが所詮彼にとっては外国語。時々分からないという顔をすると向こうは「ああ、言葉が分からないんだな」とは思いません。見た目がデンマーク人だけに「この人はちょっと頭が弱いんじゃないか」と疑われてしまうのが困りものなんだそうです。

ロンドンで知り合ったフランス人の友人も同じことを言っていました。彼の英語はとても綺麗で訛りもなく、自分がフランス人だと言わなければ相手はイギリス人だと思うそうです。しかし、勿論外国語である英語を話していると知らない単語になんども遭遇します。また、フランス語と綴りが同じために、うっかり変な発音をしてしまうこともあり、それが度重なると相手は徐々に自分を変な目で見始めるのが分かると言っていました。そういうシチュエーションが面倒なので、彼は場合によってはわざとフランス訛りの英語で話すんだそうです。面白い!と思って、それから私は彼と話す時、わざと普段は絶対使わない日本人丸出しのカタカナ英語で話すことにしました。アイ・ハブ・ザ・セーム・エグザクト・プロブレム! あと、ベタなネタですが、McDonald'sを日本語では「マクドナルド」って言うんだよというと皆笑いますね。日本のアニメファンでもあるフランス人の彼はdragon ballドラゴンボールと言わないと日本では絶対に通じないと教えてくれました。確かに。それに比べると、ナルト、ワンピースはどこに行っても通じやすいタイトルですね。

言いやすいかどうかということでいえば、私の下の名前「つよし」も欧米人にはとっつきにくいようです。特に「つ」が言えない人が多いのです。言いにくかったら「よし」でいいよと言うと、皆スーパーマリオヨッシーは知っているのですぐ覚えてくれます。

実は「つ」を発音してもらうコツを私は大分前に見つけてしまいました。それはtsunamiのtsuと同じだと言うことです。ただ、自然災害と同じだと思われるのはあまりに嫌なので、今まで使わずにいたのですが、ある時ふと気が向いて、旅先で知り合ったアメリカ人女性に「tsunamiのtsuなんだけど、悪いイメージだからヨシでいいよ」と言ったところ、「いいんじゃない?津波でも。私の名前だってハリケーンと同じよ」と彼女は言いました。彼女の名前は、2012年にアメリカ東海岸を襲ったハリケーンと同じSandyだったのです。それ以来、彼女とは互いにhurricane、tsunamiと呼び合っています。

ところで、英語で話している相手に「英語が上手ですね」と言うのは褒め言葉でしょうか、それとも皮肉でしょうか。相手が日本人だったら褒めることになりますが、アメリカ生まれの日系二世だったら人種差別ですよね。また、せっかく日本語を勉強しようと日本人に日本語で話しかけても、相手が流暢な英語で答えたら勉強にならないです。英語で返事をするのが親切とは限りませんね。そして、我々が何故英語で返事をするかといえば、やはり見た目が西洋人だからでしょう。日本に限りませんが、民族的に画一な社会に住んでいると、人を見た目で判断して「外人」と決めつけます。私もチェコチェコ人に外人と呼ばれた時は驚きました。では、外国人とハーフの日本人は?大阪生まれでドイツ語は全く話せないのに、見た目ゆえにドイツ語で話しかけられて困っているドイツ系ハーフの日本人だっているわけです。

そう考えると、やはりまずは今いる国の公用語で挨拶をして相手の出方を伺ってから、自分の得意な言語、または相手と共通の言語で話せば良いのだと思います。分からない言葉があればチャンポンでもいいじゃないですか。昔のブログで書きましたが、NYの日本食レストランで日本人ウェイトレスが厨房のメキシコ人に向かって「ワン ししゃも ポルファボール」(ししゃも一つお願いします)と叫ぶぐらいが飾らなくて私は好きです。